2010年10月31日

忘れ形見

 先日、JR海南駅東口の道路を自転車で役所に向かっていました。そろそろ、東口広場の整備

 にかかる準備なんだろうか空き地の雑草を綺麗に刈り取っていた。

 そんな光景に目をやると・・「うんっ!あれは・・」思わず自転車を止めて目を凝らすと・・

 小さな水路に架けられた小さな橋。これは1994年3月末に廃止となった野鉄(野上鉄道)

 の忘れ形見では・・・

   

 近寄りその小さな橋の先を見れば、かつて朱色とクリーム色のツートンカラーのチンチン電車

 が少し疲れた感じの走りをしてみせた線路跡地がまだその名残をとどめている。

   

 野鉄は海南市の日方駅と終着駅は海草郡野上町の登山口を結ぶ私鉄の路線だった。延長11.

 4キロを30分近くかけて走り抜いていた。走り抜いたといってもスピードがのろのろで、揺

 れ方も何となくよたよたふらふらとしていた。しかし時間通り動いていた。それに人を運ぶと

 いう本来の機能は失われていなかった。

 今も私の耳の奥には警笛と線路を走る電車の音が蘇える。県立海南高校に通う学生、買い物客

 学童から若い人、お年寄りまで廃線当時、年間利用客は約60万人だった。国などからの補助

 金で何とか賄ってはいたが、その打ち切りに伴い、とうとう廃線を決意せざるを得なかった。

 地域の足として大正時代から80年もたくさんの人を運んできたが、「あるもの」が「無くな

 る」ということは寂しい。

 今となったら「エコ」が叫ばれるて、路面電車が見直されている時代になりましたが、少子高

 齢、人口減が何とも悩ましい現実ですね。その現実を見れば致し方ないことですが、フォトジ

 ェニックでゆったりとした野鉄を存続させたかったと思うのは私だけではないのではないでし

 ょうか。

 線路のレールは撤去され、今は「遊歩道」に整備され地域住民が、散歩や憩いの場として利用

 している。

 いつの日か多くの人々の足として愛された野鉄電車が存在したことすら忘れられてしまうので

 しょうね。

 田園風景の中、涼しげな川沿いを、緑の中を、よたよたふらふら として走るあのツートンカ

 ラーのチンチン電車を・・・・

 写真を撮りつつその昔の風景を辿ってみた。


[ 榊原のりあき ホームページ ]
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Posted by サンマルクン at 21:44Comments(0)